法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)
ドコモ、KDDIの新料金プランと決算会見から見えてくる通信会社の個性
2025年6月6日 00:00
通信業界を中心に活躍するライター4人による「スマホ会議(仮)」。今回はドコモ、KDDIから発表された新料金プランや、各キャリアの決算について話し合っていきます。
ドコモの新料金プラン「ドコモ MAX」「ドコモ mini」が登場
佐藤
キャリアの動きが多かった4月、5月ですが、まずはドコモの新料金プランについて、どのように見ていますか。
石野氏
eximoとirumoの期間が短かったですね。社長が変わると、新しい方針を打ち出して、料金プランも変わるというのが、定番の流れではありますが、それにしてもeximoとirumoは短かったです。
石川氏
約2年前にeximoとirumoが発表された。当時から、名前がわかりにくいと言ってきましたが、ついにドコモの担当者も認めた。
関口
認めたのは少しびっくりしましたね。
石野氏
eximoとirumoという名前だと、どっちが安いプランかわかりにくいですよね。
石川氏
ahamoに引っ張られすぎていたよね。なので、次のドコモ MAX、ドコモ miniはわかりやすくなった。
料金プランとしては、単なる料金での競争じゃなく、付加価値に持っていく方向性が、果たして支持されるのか。DAZNを見ている人からするといいかもしれないけど、興味がない人からすると、いらないものが付いているだけになる。
一方で、前田社長(NTTドコモ代表取締役社長 前田義晃氏)は、今後、DAZNだけでなく、いろいろなものを付加価値として付けていくと話しています。アイドルコンテンツとか、IGアリーナとか。この先どうなっていくのかは注目です。
石野氏
そうですね。どこまでが付加価値として入ってくるのか。DAZNは単体で契約すると月額4200円なので、結構な金額になります。ここにLeminoだったり、Amazonプライムサービスの期間を延長する(現在は最大6か月間追加料金0円)と、果たして原資はどこからという疑問が出てくる。
ドコモ MAXの割引前価格を見ると、eximoから1000円近くの値上げになっていて、結構大胆なことをやっています。これまでeximoを使っていたり、DAZNを契約している人からすると、わずかな値上げでDAZNが見放題になるので、超おいしいプランですけど、スポーツにまったく興味がない人からすると、勝手にDAZNを付けて、1000円近く値上げしているだけになってしまうので、不公平感は強い。コンテンツが少ない現時点ではですけどね。
石川氏
KDDIの新料金プランもそうだけど、社長の色がすごく出ている。KDDIは松田社長(KDDI代表取締役社長 CEO 松田浩路氏)らしく、通信で勝負するし、ドコモはコンテンツに強い前田社長らしく、パートナーとのコミュニケーションで、どう料金プランを作っていくのかというエッセンスが出ている。
国立競技場やIGアリーナもある。今回の料金プランで、ドコモが考えていることはごく一部で、dカードでチケットを買いやすくすることもできるし、スタジアム周辺はd払いが使いやすくすることもできる。壮大なドコモ立て直しのうちの一部なのかなとも思います。
石野氏
そういう意味で言うと、KDDIはかなり慎重で、値上げ幅をギリギリに抑えているけど、特典は多い。広く薄く取るような格好になっている。ドコモの場合は、取れるところから取るという方針で、それぞれのキャラクターが出ています。どちらが“感じがいい”というと、松田さんですかね。
石川氏
そりゃ、KDDIは「さよならau」の一件(2020年12月発表の「データMAX 5G」の反響)で懲りているでしょうから。すごく慎重で、経済を継続させていくための値上げという説明もされていた。
法林氏
かつて、ドコモのiモードサービス料が、150円から300円に上がったことがあった。150円×iモードのユーザー数が増えるので、収益は一気に上がった。
それと同じなんだけど、実はDAZN自体の調子が悪いのも事実。DAZNに対して、ドコモとJリーグが助け舟を出したようにも見える。利害が一致してできあがった料金プランだと思う。なぜドコモの料金プランなのに、LeminoじゃなくてDAZNなのかという話にもつながるし、Amazonプライムの割引も半年しか継続しない。
対して、auの料金プランは、Amazonプライムの20%還元が恒常的に付いている。そう考えると、ドコモ MAXには、「DAZNを救う」という意思が強く見えるし、石川さんが言った通り、前田社長のカラーが出ているとも思う。
石川氏
実際、ドコモがDAZNに一人あたり4200円/月を払っているのかというと、そうではない。相当安い契約になっていると思います。
法林氏
DAZNがドコモ、KDDI、ソフトバンクからもらうお金は、それぞれ違うはず。
石野氏
ドコモは相当安いはずですよね。
石川氏
そうですね。あと、プレゼンでの見せ方で、割引適用後の料金が大きく表示されていて、割引前の価格が見にくいという指摘があったけど、決算会見では、使い放題プラン契約者のうち、およそ半分が、割引をフルで適用していると言っていた。ドコモから見ると、割引を付けることが前提になっていて、いかにドコモに浸かっている人を逃がさないかという料金形態になっています。だからこそ、割引後の料金を大きく見せることに、違和感がないのでしょう。
石野氏
割引オプションで引っかかるのは、「みなさんに待ち望まれていた長期利用割を付けた」と言っているけど、値上げしてから引いているだけ。それはただの縛りじゃないですか。
石川氏
しかも、一回長期利用割がなくなって、ドコモからMNPしている人もいる。そこで割引が復活するのは、かつてのドコモユーザーからすると、ひどい話だよね。
法林氏
ドコモの料金プランでよくないのは、ポイ活プランで返ってくる5000ポイントを基本料金から差し引きして記載していることがある。
石野氏
それで言うと、ソフトバンクも同じですね。
ドコモは、eximoユーザーのうち、割引をフルで適用できる人が50%ほどという話ですが、逆に言えば、残りの50%の人にとっては、厳しい値上げです。dカード割が550円にまで上がっているし、長期利用割も、継続期間が20年以上でないといけない。ドコモ信者みたいな人じゃないと、あの金額にはなりません。割引がすべて適用できないユーザーは、自分が果たしていくらになるのかを把握できるのかという疑問もあります。条件が複雑すぎる。
石川氏
ドコモ視点で言うと、ヘビーユーザーにはドコモ MAXだし、そうではない人にはahamoというすみわけができているのでしょうけど、こちらから見ると、DAZNがないプランはないのかともやもやしてしまう。
石野氏
ahamoでいいじゃんという話にもなってしまいますけどね。
関口
最大手らしいと言うか、すでに長期利用している人が多いドコモならではですし、NTTの島田社長(日本電信電話 代表取締役社長 社長執行役員 島田明氏)が言っている「シェア率35%死守」という話に、マッチした料金プランですよね。
石川氏
死守するためのプランというか、囲い込むためのプラン。
石野氏
複雑なオプションがついていないプランがいい人には、ahamoがあるという形で、すみわけはできていますが、ahamoには転送電話や留守電がない。ahamoをしっかりと立たせるのであれば、ネットワークサービスとしてのスペックは、もう少し揃えてほしい。
石川氏
ahamoとドコモの料金プランを両立させるのであれば、ahamoのオンライン専用という立て付けをやめて、ドコモショップの看板にahamoも掲げて、店頭で正規対応するべき。
石野氏
ahamoの料金で、代理店の手数料を払うのがきついだろうし、店頭受付をしっかりとやると、値上げになってしまうのかなとも思いますけどね。
法林氏
ポイ活のほうを見ると、ドコモ ポイ活 20というプランも用意されている。20GB以降無制限という設定で、割引は一部ないけど、悪いプランではないのに、あまり注目されていません。
石野氏
ドコモ ポイ活 20は無視されがちですよね。僕も無視していました(笑)。
法林氏
「ドコモ MAX 20」はないんだよね。ポイ活プランしかない。なので、dカード GOLDやdカード PLATINUMを持っている人で、ポイ活をしているのであれば、こっちでもいい。
石野氏
名前に20とついているので、20GBまでのプランに見えてしまいますが、実は違うんですよね。楽天モバイルの料金プランから、間の階段を削ったようなプランになっています。
法林氏
そうそう。割引オプションが減ってはいるけど、家族割とかはあるし、悪くない。割引後の値段は、20GBまで4818円/月、超過後は6490円/月で、上限2500ポイント還元ならいいよね。
石野氏
やっぱり、dカードお支払割が550円になったのは大きいですよね。今までは、クレジットカード会社に支払っていた手数料分を、キャリアが支払いたくないから、自社カードを使ってほしくて始めた割引で、170円くらいが相場だった。一気に2.5倍くらいになっています。
ドコモ ポイ活やドコモ MAXはまだしも、ドコモ miniでも550円割引になるのは、大きいです。
法林氏
それはdカードのユーザー数を獲得したいからだよね。
石野氏
もちろんそうですけど、露骨すぎませんかね。そもそもdカードは会員数が多いし、dカード GOLDにしている人も多い。キャリアで言えば、楽天カードを追いかけているような規模感なのに、550円も割引を適用したら、ほかのキャリアが追随してしまう。
法林氏
かつてのdカード GOLDには10%還元があって、今はdカード PLATINUMがある。dカード PLATINUMの状況はかなりいいらしいね。
石川氏
60万契約ですよ。すさまじいです。リリースの時には、3桁契約を目指すと言っていて、懐疑的に見ていましたが、本当に行きそう。
法林氏
だって、びっくりするくらいポイントが返ってくるよ。d払いの利用率が上がる。
石川氏
もともとキャリアは、割引がしたくてしょうがないのに、総務省に止められているような状況なので、じゃあカードでと振り切るのはわかる。
法林氏
金融事業がうまくいっていて、順調に伸びているみたいなので、やり方としてはよかったと思う。料金プランとして考えたときには、DAZNをバンドルしたことをOKとするのか。僕はサッカーを見るし、石川さんはF1を見るからいいけど、そうではない人からは、Disney+を付けてほしいといった声が出てきてもおかしくない。
石川氏
なので、DAZNに代わるものをどれだけ付けられるのかが、今後の勝負になります。それってなんだろうとは思いますが。
法林氏
あと、DAZNを推すのはいいけど、DAZNをテレビで見るためのデバイスをドコモが取り扱っていないのはどうなのか。Google TV Streamerとか、Apple TVとか、オンラインストアでも売ればいいのに、なにもやっていない。以前はdTVがあったけどね。
石川氏
Android TVが結構普及しているんじゃないですか?
法林氏
Android TV、今はGoogle TVになったけど、これが普及し始めたのが2020年から。テレビのライフスパンは10年くらいあるので、まだ全然置き換わっていない。
最初期のシャープやソニーのAndroid TVはまだ稼働しているし、ほかのメーカーのものは、別のOSで動いているので、アプリも全然ない。だから、HDMIで外付けしている人が多い。パナソニックは長らくFirefox OSを採用していて、この前、ついにAmazonのFire OSに切り替わったばかり。
世の中の人が、Android TVやGoogle TVをたくさん使っているかというと、案外そうでもないよ。うちも10年くらい前のテレビだから、Fire TV、Google TV Streamer、Apple TVが繋がっているような状態。
佐藤
うちもChromecastをつなげていますね。
法林氏
そうだよね。だから、Chromecastを売るとか、店頭デモをするといった努力をしたほうがいい。
石野氏
それで言うと、グーグルのホームデバイスのやる気のなさが顕著なのが気になります。スピーカーもカメラも、全然新しいものが出ていないですよね。毎年出るデバイスではないにしろ、放置しすぎています。
法林氏
ホームデバイスだと、カメラは今、需要あるよね。
石野氏
そうなんですけど、グーグルは全然出していない。後継機が全然出ないと、いつ辞めるのかわからなくて、家のセキュリティを任せる不安が出てきます。
石川氏
僕は全部Amazon Ringに変えましたよ。
法林氏
Amazon Ringにした人は、結構いるらしいね。
石野氏
MWCとかに行くと、Google Nestカメラで記録した映像を、生成AIが編集して、いつどんな人が来たのかを見やすくするといった機能も紹介されていたんですけど、日本には一切伝わってきません。
法林氏
日本語をやる人がいないんじゃない?
石川氏
本国がやる気ないんですよ。
関口
ドコモ料金に話を戻すと、料金ラインナップとして、使い放題とエンタメのMAX、あまり使わない人向けのmini、自分である程度できて、DAZNなどはいらないという人のためのahamoにしたと、会見時に語られていますが、この揃え方はどうお考えですか。
石野氏
王道ですよね。KDDIも同じような考え方です。一方で、キャリアとしては、小容量はあまりやりたくないんだなと感じました。
石川氏
小容量はやる気がないように見えるよね。グーグルのホームデバイスに通じるものがある(笑)。
法林氏
データ通信を使わない人は、どうやっても使わないので、あまり手当てしてもしょうがないんだろうね。本当はよくないけども。
石野氏
UQ mobileも、ミニミニプランはバッサリ切ってきましたからね。
石川氏
でも、ドコモ miniの月々4GBで2750円も支払うなら、MVNOで契約したほうが幸せですよ。
法林氏
それは他社も同じでしょう。まだ偉いなと思ったのは、4GBに設定しているところ。昔のパターンだと、1GBにしていた可能性すらある。
総務省のご意向があるのかわからないけど、MNOの中の小容量プランの意義を薄めようとしているよね。
石川氏
ただ、この状況になって、ちゃんとした競争になり始めている。総務省の圧力で、無理やり値下げしたところから脱却して、キャリアのメインブランドは優良顧客のためのフルサービスプランになっているし、MVNOの価値も上がってくるはず。ユーザーにとって、選択肢ができてきたのは、喜ばしいと思います。
関口
4GBで2750円/月は、ショップ利用料なども考えての設定ということですね。
石野氏
そうですね。KDDIの場合は、ミニミニプランがなくなっても、povoがあるので、受け皿がある状態。ドコモは受け皿がないのが気になる。
法林氏
ただ、eximoほどじゃないだろうけど、割引が適用される人は多い。
石野氏
適用しやすい割引が用意されてはいますね。
法林氏
僕はテスト用の回線はこれでいいかなとも思いましたね。
石野氏
ドコモの家族割は、3親等以内の人が光回線を引いていれば適用できるので、広範囲で割引してくれます。
法林氏
あまりデータ通信を使わない人に対する料金プランのあり方は変わってきたけど、割引を残していることを考えると、まだOKなのかな。逆に、KDDIの小容量プランは、ちょっと疑問がある。
KDDIは特典を追加したバリューリンクプランと既存プランの値上げを発表
法林氏
KDDIの新料金プランだと、UQ mobileのミニミニプランがなくなって、小容量プランはどうするのか。バリューリンクプランは、よかったと思うんだけどね。まだ整理は必要だけど。
石川氏
よく考えたら、au マネ活プランが改定されたのは、昨年の11月。
法林氏
短命どころの話ではないよね。
石川氏
ただ、サービス内容はほぼ継続になっていますね。
法林氏
KDDIは「リニューアル」という表現をしている。過去の料金プランの歴史を見ても、こういったやり方はあまりなかった。
石野氏
そうですね。プラン数は多いし、既存プランは値上げで、相当アグレッシブなことをやっているんですけど、ユーザーのことを考えている感がすごく出ていて、一斉にやるわりには、大した値上げではない。
法林氏
料金プラン別契約数の分布は、明らかになっていない。auの場合、使い放題プランの契約者が実は半分もいないんじゃないかな。
今回の値上げは100円~300円で、使い放題プランの300円プランに注目しがちだけど、スマホミニプランの100円値上げに、ものすごいユーザー数がいて、インパクトが大きいのではないかとも思う。
石野氏
でかいですよね。バリューリンクプランに関しては、値上げはされているけど、内容を見ると、むしろ赤字というか、KDDIからするとマイナスになっている可能性もあります。
法林氏
だから、小容量プランのユーザーのほうが、負担率という意味では増えるんじゃないかな。
石野氏
バリューリンクプランは、Starlinkもありますし、Pontaパス、Fast Laneもあって、対象のサブスクが20%オフになる。
法林氏
Pontaパスは結構、有用だよね。
石川氏
結局、サービスを使う人は得をするけど、じゃあどれだけ使われているのかとも思う。au海外放題なんて、どれだけのユーザーが使っているのか。
法林氏
日本人の6人に1人しかパスポートを持っていなくて、10人に1人しか、年間で1週間も海外旅行に行かないというデータもある。
石川氏
しかも、海外に行くときにはWi-Fiを契約する人も多い。
法林氏
ただ、Pontaパスを料金プラン内に入れたのは、遠回りだけどいいと思う。Pontaパスの中には、セキュリティアプリと迷惑電話対策アプリが標準で入っている。エンタメの話が注目されがちだけど、この辺りが入っているのがユーザー的にはいいと思う。
セキュリティ関連のアプリに、月500円を追加で払うのに抵抗がある人もいると思うけど、最初から中に入っているならいいと思う。ブラウザクラッシャーで引っかかる人が多いからね。
石野氏
迷惑メールを送るのにつかわれてしまうのも、ブラウザで悪質なサイトを踏んでしまって、不明なアプリをインストールしてしまって、踏み台にされていることがあります。Androidユーザーなら、対策アプリを入れておいていいですよね。
法林氏
昔は、ウイルス対策ソフトを入れると、動作が重くなるという話があったけど、今はそんなことはない。なので、セキュリティアプリが使えるPontaパスが標準で料金プランに入ったのは、いいことだと思う。
石野氏
あと、Pontaパスは、月曜日と水曜日は、映画が1100円になる点だけでも、結構お得。使える映画館は限られていますが。
関口
au 5G Fast Laneについてはどうですか。
石野氏
Fast Laneは、技術的には面白いですし、5G SA(5G専用のコアネットワーク設備と、5G基地局を組み合わせて通信をする方式)でスライシング(ネットワークを仮想的に分割する技術)につなげていきたいというのはわかりますが、ユーザーとしては、そんなに気が付かないだろうなと思っています。
そもそも5G SAの契約が必要で、5G SAエリアでの話だし、混雑時に優先スロットを割り当てられるだけなので、非契約者の通信に影響が出るほどでもない。実証実験でも、1.8倍程度の違いになっているので、スピードテストを行うくらいじゃないと、気が付かないと思います。
法林氏
フィールドトライアルをやっているのはわかるけど、表現として、Aさんにこれだけスロットを割り当てて、Bさんにはあまり割り当てないという仕組みを作るのは、悪いことではない。将来的には、通信速度別の料金プランが提供できるのかもしれない。実用性はわからないけど、可能性としては面白い。
関口
MVNOでは、mineoの「マイそく」がそのような仕組みですね。
法林氏
マイそくを極端にしたような感じだね。問題は、50Mbpsでのダウンロードと、1Gbpsでのダウンロードで、ユーザーが違いを感じるのか。そもそも端末のスペックに依存する部分もある。
石野氏
ただ、こういう仕組みは、オプションにしてしまうと、普通の人は加入してくれないし、混雑時に1.8倍速いことに惹かれない人も多いはず。料金プランの中に、プレミアムなサービスとして入れるのはうまいですよね。
石川氏
オプションにすると、保証しないといけなくなる。料金プラン内に入れれば、ベストエフォートですと言い訳ができるので、ネットワーク系のサービスのやり方としてはいいと思います。
佐藤
料金プランに組み込まれている、auサブスクぷらすポイントはいかがですか。
石野氏
見せ方がうまいですよね。ドコモの場合は、料金プランの説明に、爆上げセレクションを入れていなかったので、auではここぞとばかりに、20%還元をアピールしていました。
法林氏
auのほうが発表会は後だからね。
石野氏
しかも、対象サービスの種類はauのほうが少ない。爆上げセレクションには、Nintendo Switch Onlineとかもあります。
法林氏
ちょっと疑問なのは、auのALL STARパックでバンドルしている場合は、20%還元の対象にはならない。じゃあ、バンドル化されていない料金プランを契約して、サブスクぷらすポイントでポイント還元を得たほうが、お得なのかと。
石川氏
そこはわからないんですよ。
法林氏
整理してほしくない?
石野氏
そこは、わからなくしているほうが、事業者としていいのかもしれません。バンドルプランには、あまり人気のないサブスクサービスも、ついでに加入してくれるといったメリットがあります。
石川氏
auのバンドルプランはよくできていて、「このサービスは欲しいけど、こっちはいらない」と思って、もっと安いプランを探すけど、見つからない。結局、面倒くさくなって、ALL STARパックになる(笑)。
法林氏
うちは夫婦二人ともALL STARパックだよ。ただ、ALL STARパックに入っていても、対応していないサブスクサービスもたくさんある。爆上げセレクションで言うと、Disney+とか、Spotifyがあるのは大きいよね。サブスクサービスを、ユーザーが選んで契約するという仕組みは、よくできている。
石川氏
爆上げセレクションが始まった当初は疑問もありましたが、このラインナップを見ると、頑張っているのがわかります。なのに、露出が減ってきている。
法林氏
コンテンツプロバイダ側は、どう思っているんだろうね。
石野氏
いいんじゃないですかね。キャリアを経由していれば、クレジットカードの期限切れで、請求ができなくなるといった心配もほぼないですから。
石川氏
あと、店舗で対応してくれるのは大きい。
au バリューリンクプランで言うと、あとは、au Starlnik Directのアドバンテージは、1年くらいしか持たないことになる。ドコモもソフトバンクも、2026年に開始すると宣言したので。
石野氏
ソフトバンクは、HAPSでまだまだ時間がかかりそうだったのに、急に話が進みましたね。
関口
ドコモとソフトバンクは、決算会見で急に発表しましたね。
石川氏
想定問答に入っていたんだろうなっていうくらい、準備していたことが伺えました。
関口
資料への投影はなかったですよね。
石野氏
ドコモは、石川県能登でのプログラム説明のスライドに、しれっと記載していたらしいんですけど、だれも気が付かなかったので、前田社長が自ら発表していました。
石川氏
形としては、3キャリアがStarlink、楽天モバイルがASTで衛星通信をすることになるので、どうなるのかが見もの。
法林氏
問題は、利用するシーンがないとは言わないけど、そもそもエリア外にあまり出くわさない。ユーザー的には、安心感が増えるのは確かだし、エリアの細かい差はあるけど、災害時にも使えるのは大きい。
石川氏
利便性を実感する人はごく一部だけど、auが「衛星と繋がる」と1年間言い続けられるのは、マーケティング的に大きいし、来年には横並びになるので、競争がおしまいになりますね。
石野氏
そうですね。ただ、楽天モバイルは、話を聞く限り、プラチナバンドを衛星で使いたいんだなと思いました。エリアを構築するつもりは、あまりないのかなと感じています。
石川氏
地上、衛星の両方でプラチナバンドを吹くと、どうしても干渉してしまうので、どちらかにしたいはず。そう考えると、衛星からのほうが、やりやすいんじゃないですかね。
石野氏
シャラッドさん(楽天モバイル代表取締役 共同CEO兼CTO シャラッド・スリオアストーア氏)は、プラチナバンドへの三木谷さん(楽天モバイル代表取締役会長 三木谷浩史氏)の言及を制止していましたけどね。
関口
法規制もまだですからね。
石川氏
だから、楽天モバイルのイベントには、総務省の人も来ていた。
佐藤
プラン改定で言うと、UQ mobileも注目ですね。
石野氏
UQ mobileは、ちょっと心配になりますよね。
石川氏
以前、ワイモバイル対抗やahamo対抗をしているときは、結構元気だったんですけどね。
石野氏
軸がブレがちですよね。上のプランと下のプランの両方を相手しようとしていて、右往左往している。
石川氏
新料金プランは、コミコミプランバリューが35GB/月、トクトクプラン2が30GB/月。35GBと30GBっていうのも、よくわからないよね。
石野氏
コミコミプランバリューは、35GBで月額3828円、1回10分の国内通話かけ放題もついています。そもそも、現行のコミコミプラン+も、33GB/月で3278円、1回10分国内通話かけ放題が付いていて、どう収支が成り立っているのかがわからなかった。
UQ mobileは、店舗受付もやっているオフラインブランドなのに、なぜ料金でオンラインブランドと対抗するのかがわかりません。コミコミプランだけ割引がないとかもそうです。プランごとにこっちはahamo対抗、こっちはMVNO対抗みたいになっていて、自分がない感じがしてしまいます。
今回の改定で、さらにその複雑さが強まっています。コミコミプランバリューに果たしてPontaパスが必要なのか。そういうサービスがいらない人のためのものだったはずです。
法林氏
自分にとって不要なものに、お金を追加で払いたくないという人がサブブランドや別ブランドに行っていたはずなのにね。
石川氏
店頭対応を考えると、こうやって得している感じを出したほうがいいのかもしれない。賢い人は、povoに流れていきます。
関口
UQ mobileの特典は、Pontaパスとサブスクぷらすポイントで、わかりにくいau Fast Laneなどは入っていない。実感はしやすいですよね。
石野氏
そうなんですけど、ahamo感覚でそこそこの容量を安く、au回線で使えていいよねと思っている人に、いきなりPontaパスを提示しても、わかってもらえないと思います。
石川氏
auのメインブランドもUQ mobileも、いろいろな特典を乗せてお得だからちょっと値上げするねという、キャリアとしての王道を突き進んでいる。これがやりやすいんだろうなとも思う。
一方で、じゃあahamoはどうやって値上げするのか。シンプルな料金プランになっているので、特典を乗せにくくて、差別化しにくい。
法林氏
料金プランとして、UQ mobileはいじれるけど、楽天モバイルやahamoはいじりにくい。料金プラン改定の余地があるかという観点は、結構大きいよね。今更、ahamoの容量は削れないし、値上げもできない。
ただ、UQ mobileのプラン改定は、不自然とまでは言わないけど、auとの連動性もあまり感じない。
石川氏
auの料金が値上げになると、メインブランドからUQ mobileにユーザーが流れるので、UQ mobileが安すぎると、会社としてマイナスに振れてしまう。なので、UQ mobileも料金をあげないといけないんじゃないですかね。
法林氏
ソフトバンクは、メインブランドからワイモバイルに流れる人もいるけど、ワイモバイルからメインブランドに戻る人も一定数いるらしいので、戻れるくらいの、ほどほどの差額にしておくのがベターってことだね。
石野氏
ただ、UQ mobileの改定が料金プランとして変なのが、通常こういうプランだと、セット割などを付けるのが王道なのに、そういうのはなしでPontaパスだけついている。シンプルを保ちたいのか、複雑にしたいのかがわからなかった。ahamo対抗はもうやめればいいのにと思ってしまいましたね。
関口
KDDIは決算会見で、ARPUの定義を変えると話していましたよね。Pontaパスなどを付けていくと、結果ARPUが上がるということですかね。
石川氏
楽天モバイルの悪い影響ですよ。ARPUの定義とは、という話になる。
Opensignalの調査ではauがアワードを最多獲得
関口
Opensignalの調査結果が発表されて、17部門中11部門で、auがアワードを獲得していますね。
法林氏
結果を見ると、こんなにソフトバンクが受賞できないのかなと思ってしまうよね。
石野氏
1位がアワードを総取りする形になってしまっていますからね。ソフトバンクはほぼ2位で、惜しい部門がたくさんある。
法林氏
そうだよね。au、ソフトバンクの順番になっているのは、体感としてある。ドコモは場所によって、つながりにくいところがまだある。
関口
宮川社長は、必ず巻き返すと発言していますね。
法林氏
それは十分、あり得るかな。ソフトバンクは使っていて不満を感じない。
石野氏
ただ、僕らが東京にいるからという話でもあります。ドコモは、エリアカバレッジの指標だと勝っていますし、実際地方では、ドコモしかつながらないという場所もある。
逆に言うと、人口が多いのも都市部なので、数として不満が出やすいのも都市部ということになります。
法林氏
ネットワーク的な不調も出やすいし、誇張されやすかったりもする。
石川氏
でも、解約率を見ると、つながりにくいからといって、みんながMNPするわけではないみたいですね。
石野氏
とはいえ、ここまで収益が落ちていて、irumoにユーザーが流れている理由ではあると思います。決算も結構厳しかった。
法林氏
電話番号としては維持しているけど、2枚目のSIMにほかの回線を入れている人は多い。あと、若い世代はスマートフォンを2台持っている人も珍しくない。
あとは、irumoがMNP割引の踏み台に使われているという話もあるので、かわいそうと言えば、かわいそう。
石川氏
直近では、iPhone 16eに4万円の割引を付けて、ユーザーを取りに行ったりしていましたよね。
法林氏
ドコモはあまりMNPで他社から獲得することに、お金をかけていなかったよね。
石野氏
獲得コストをケチった感じはありますよね。
法林氏
そうだよね。電気通信事業法の規制が完全にかかる前のタイミングだったので、もっとちゃんと動いてもよかった。