石川温の「スマホ業界 Watch」

「子供がiPhoneを欲しがる」ことと7年前のiPhoneでも「iOS 18」が使えることの関係とは

 ここ最近、SNSでは「なぜ、子供はiPhoneを欲しがるのか。Androidじゃダメなのか」といった議論が盛り上がっていた。

 子供がiPhoneを欲しがる理由として「友達がみんなiPhoneを持っている」「AirDropが使えないと仲間はずれになる」「iMessageが使えないと不便」といった声が上がっている。

 そんななか、アップルは6月6日、全iPhoneユーザーの82%が最新のiOS18をインストールしていると明らかにした。直近4年間に導入されたiPhoneにおいては88%がiOS 18なのだという。

 この「iPhoneは子供に絶大な人気がある」と「最新iOSのインストール率の高さ」という2つの事象は、全く別のように見えるが、実は密接に関係しているのではないか。

 iPhoneユーザーの82%が最新のiOS 18をインストールしているということは、すなわち「古い機種でも最新のiOSがインストールできる」ということでもある。

 実際、iOS 18においてはiPhone XS/XS Max/XR など2018年以降の機種、iPhone SE(第2世代)以降で利用可能だ。つまり、7年前のiPhoneで使えてしまう。

 古いiPhoneでも最新OSが使えるということで、親にとってみれば、自分が最新のiPhoneを買い換えたときに、古くなったiPhoneを子供に渡すということができる。もちろん、子供のiPhoneも最新のiOSだ。

 iOS 18はホーム画面のパーソナライズやコントロールセンターの表示が従来と比べて進化しているが、iPhoneの外見はさほど違いがないので、ぱっと見、新しいiPhoneに見え、周りから古い機種を持っているようには見えないというメリットがある。

 iOS 18ではメッセージで文字の強調が行えるようになったが、古いiPhoneでも友達同士でiOS 18であれば、お互い、同じテンションで会話することができる。

 「子供には安いAndroidでいいのでは」という意見も十分理解できるが、iPhoneであれば「親のお古」でもいいし、中古店で過去モデルを調達することも可能だ。もちろん、キャリアがさばいている型落ちになったモデルを買うというのもアリだ。

 最新のiPhoneは20万円を超えるが、古い機種であれば、かなり安価に入手できる。そうした点においても「親が子供に渡しやすいスマホ」といえるだろう。

 もうひとつ、古い機種でも最新のiOS 18をいれることでのメリットは「セキュリティ」だ。

 最新のセキュリティアップデートが配布され、常にiOSを最新版にしておくことで、デバイスを安全に保ち、悪さをするウィルスやマルウェアからユーザーを守ることができる。

 テクノロジーや最新機能に興味がないユーザーは最新のiOSなんて興味がないだろう。

 しかし「とにかく安心してiPhoneを使いたい」のであれば「最新iOSにしておく」ことが重要だ。

 技術のことはよくわからない人こそ、ソフトウェアアップデートの「自動アップデート」を「オン」にしておけばいい。

 ちなみにうちの妻や母親も「自動アップデート」が「オン」になっていた。聞けば「よくわからないが、最新OSにしておけば安心そう」ということで、迷わず「オン」にしていたとのことだった。

 子供や、テクノロジーに疎い家族を守るという点においても、iPhoneを持たせておけば安心という側面がありそうだ。

 直近4年間のiPhoneにおいては88%がiOS 18という状況を聞くと、国内4キャリアがiPhoneを扱ってはいるが、やはりiPhoneはアップルの製品であり、アップルの垂直統合モデルを貫いている点が大きいと思ってしまう。

 この点、Androidに関しては、グーグルが最新OSを提供しているものの、メーカーによって、実装はバラバラであり、アップデートのタイミングもメーカーの事情にプラスして、キャリアの都合も影響されていたりする。

 最近は、かなり状況は改善しつつあり、メーカーが新製品発表時に「セキュリティアップデートは●年、OSアップデート最大●回」と約束してくれるようになった。ただ、これもメーカーによって、かなりのバラツキがある。

 Galaxy S25シリーズでは、OSアップデートは7世代、セキュリティアップデートが7年間という明言されているが、新機種が出て、すぐに最新OSが提供されるかといえば、結構、待たされる。ユーザーとしては、なかなか最新バージョンが提供されないとなると、テンションが結構、落ちてしまうものだ。

 その点、iOSの場合は、最新のiPhoneが発売されると同時期にiOSもアップデートされ、ひとしく、対応機種に配布される。このあたりの「ユーザー体感」はiPhoneでしか得られないとも言える。

 最新のiOSが多くのユーザーに使われるということは、アプリを提供する側としても、検証作業が楽であり、安定した動作を提供しやすいことにつながる。結果として、ユーザーのアプリに対する満足度が上がるのだ。

 最新iOSを7年も前の機種に、いち早く配布するというアップルの取り組みは、なかなか他社が真似できない領域に達しているのかもしれない。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。